なぜ、初級のコピーライターがプロに勝てるのか?
あなたは「ビギナーズラック」という言葉を聞いたことはありますか?「ビギナーズラック」とは初心者が玄人よりも結果を出す現象のことです。運やツキも関係するかもしれませんが、知らないことがむしろ「強み」となって、逆にフロー状態を生み出し、結果となって表れる現象とも言えます。
たとえば学校の先生です。新人1年目にもかかわらず生徒からの反応も良く、学校側の評価も高かったりします。これは、よくある話です。他にも、営業経験がまったくないにもかかわらず、転職先でいきなり営業成績がTOPになったりします。このような現象を「ビギナーズラック」と呼んでいます。初心者だからこそ成せる芸当です。
広告の世界でもビギナーズラックは起こります。はじめてつくったチラシ広告なのに「バカ売れ」することがあります。同じく、はじめて作ったセールスレターがいきなりヒットする、なんてことも。
ここまではいいでしょう。問題はココからです。このような奇跡的なことが起こると「私、才能あるかも」と、さらに張り切って勉強するようになります。併せて、自分が扱う商品・サービスもさらに研究するようになります。そうして一年後、同じキャンペーンがやってきます。
目次
プロが陥りやすいライティングの落とし穴
一年前よりもスキルが身に付いたあなたは「昨年よりも」と張り切ってチラシをつくります。一年前よりもキャッチコピーは斬新だし、デザインも凝っています。同じようにホームページの準備も万端です。そして自信満々であなたは中高年主婦向けに新聞折込チラシを実施します。
新聞折込チラシが施されたその日の朝はスタッフと共に電話の前で予約帳とボールペンを持ち、電話が鳴るのを楽しみにして待ちます。で、どうなったのか?結果的に二年目のプロジェクトは散々な結果に終わります。チラシもホームページも完璧だったハズです。
この瞬間、あなたは自信喪失状態に陥いるでしょうね。
実は私も同じような経験をしています。コピーを学び始めたばかりの頃に作ったチラシはブレイクしたのに、その後は思ったような結果が出ませんでした。にもかかわらず、自分のビジネスではない、依頼されて気軽な気持ちで手を加えたチラシ広告から商品がバカ売れする。
不思議ですね。でも、これはコピーを書いた人であるなら、誰もが経験することでもあります。なぜ、このようなことが起こったのか?答えを言いますね。うまくいかなくなった”ことの原因”は「勉強し過ぎた」ところにあります。新聞折込チラシの反応が得られなかったのは、お客さまの視点ではなく、専門家の視点で広告をつくったからです。
商品力よりも大切なもの
つまり、売れないのは商品・サービスに問題があるからではなく、専門家の視点で販促を考えたり広告をつくったりしてしまったからです。広告というのは、見込み客の感情にアクセスして見込み客の不安を取り除き、見込み客の問題が解決した後の新しい世界を見せることが本来の役割です。
にもかかわらず、多くの広告は商品のスペックばかりを強調したりするのです。それではお客さまが離れていく一方です。
このように専門性に特化すればするほど(専門性に特化すること自体は間違いではない)お客さまとの距離が遠くなってしまうという「負のスパイラル」に入ってしまいます。盲点(スコトーマ)ができてしまうのですね。こうなってしまうとパラダイムシフトを起こさない限り、そこから抜け出すことはできません。
おそらく、世の中のほとんどのビジネスがこのような落とし穴にハマっているのではないでしょうか?
高度成長時代のような右肩上がりの時代であれば「スペックの違い」を伝えるだけで商品は売れました。でも、現在は商品の価値プラス、精神的な価値を重んじる時代なのです。「付加価値」という概念もここから生まれています。
お客さまの視点で広告をつくる
私がチラシやレターをレビューするときに最も意識していることがあります。それは、レビューするチラシやレターが「お客さま視点に立てているかどうか」です。つまり、この(チラシの)商品・サービスを受けることで生まれるであろうストーリーが「お客さま視点」で描かれているかどうか、ということです。
あなたの商品・サービスが主人公ではありません。お客さまが主人公だということです。
たとえば、ビフォー&アフターを載せる場合です。モニターさんはターゲットとなる方の年齢よりも5歳くらい若くしなければなりません。特に中高年の女性の場合は実年齢よりも若く見られたいという潜在的な欲求を持ち合わせています。チラシを見た時に写っているモニターさんが実年齢と同じか上であった場合は、無意識的に拒否の心理が働きます。2~3秒で判断しているとも言われています。
おそらく多くのコピーライターはターゲット(ペルソナ)と同じ年齢の方をモニターに使うと思います。また、現場を経験したことのないコンサルタントはそのように指導するでしょう。それで良い場合もありますが、多くは違います。特に中高年女性がターゲットで健康系商材の場合は、こうしたお客さま視点に立った配慮が必要となります。女性は実年齢よりも若いデザインを選びたいのです。
バカ売れ広告のポイントは「何がどう変わるのか?」
最後にダメなチラシとバカ売れチラシの違いについてまとめておきたいと思います。まずは、広告の役割については前回に書いた記事のとおりです。広告とは「商品の良さをわかりやすく伝えて売る」と説明しました。
ポイントは「わかりやすく伝えて」ですね。「わかりやすく伝える」というと専門家は他社との違いを「スペックの違い」だけで強調しがちです。たとえば「○○成分が20%増量」とか「○○で一番売れている」などをデカデカと強調するのですね。見込み客からすれば「それがどうしたの」となるような内容です。「お前の自慢話に付き合う暇はない」というのが見込み客の心理です。
では「わかりやすく伝える」とはどういうことなのか?
もう、おわかりでしょう。答えは「見込み客の何がどう変わるのか?」がレターから五感を通じて伝わっているかどうかです。「○○キロ痩せました」と同時にビフォー&アフターの写真を載せるのは、その方が一目瞭然だからです。未来のお客さまから逆算して、広告をつくる必要があるのです。順番としては商品スペックの紹介は、その後となります。
伝えるにも順番があるということです。
初心者の気持ちを忘れないこと
そもそも人っていつも「変わりたい」という願望を持っていますからね。常に変化を求めているのです。そういう方に対してキャッチコピーで関心を惹きつけ、クロージングへと導くのが広告の役割です。商品は変化を起こしてもらうための一つの手段にすぎません。彼らは変化を求めているのであって、商品を買うことが目的ではないということを忘れてはなりません。
我々起業家というのはその分野の専門知識を持ち合わせたマーケッターであるべきです。普段からあなたが対象としているマーケットにいる人々が「何を求めているのか」について関心を持っていないといけません。専門知識を深めることは大切です。しかし、素人感覚を忘れてしまうとそこに大きなギャップが生じ、それが命取りになることもあるということです。
あなたの周囲にも自分のことばかりしゃべる人がいませんか。おそらくそういう人に人は寄っていかないと思います。気が付いたらひとりぼっちです。人間誰もが自分の話を聞いてもらいたいと考えています。理解されたいのですね。これはビジネスも全く同じです。
商品自慢ばかりしている会社の商品から人々は離れていくということです。プロになっても初心者でもある「見込み客の視点」を忘れてはなりません。「理解し理解される」という順番です。すべては「共感」から始まりますからね。
本記事のまとめ
①ビギナーズラックは起こるべくして起こっている。
②広告はプロ目線ではなくお客さま視点に立ち制作する。
③お客さまは「変化」しか求めていない。
④初心者の気持ちを忘れないこと。
*コンテンツの中では、知的刺激の材料として活用いただくために、あえて誤解を招くような過激な表現をしている場合もございます。「これは違うんじゃないか?」と疑問に思うところから、ご自身の発想・気づきを深めるきっかけにしていただければ幸いです。